待たせる身が辛い

躁鬱 首の皮一枚大学生 レズビアン

夢女子、苦しい

とあるゲームの人間に恋した。初めての感情を知った。生まれたて夢女子。

 

今までも乙女ゲームは好きだったが、あくまでもヒロインに憑依して二人の恋愛を応援する、追体験する、背後霊としてときめく、という楽しみ方をしていたように思う。その二人だからこその出会いがあって、二人が育った環境や抱えた事情があって、それが活かされたシナリオだからこそこの二人の恋愛が輝くんだよ……という感じで、「ストーリー」を楽しんでいた。やはり、ストーリーがいいからそのキャラクターにもハマる。今までも大好きになった乙女ゲームのキャラクターはいたが、その時は「私=ヒロインちゃん」として好きだった。

 

今回は違う。一味違う。知らないぞこの感情は……と困惑した訳は、「ヒロイン」ではなく「私」が彼に恋したからだ。

作中世界に「自我」が割り込んでしまった。ヒロインに自己投影して愛されるのを楽しむのではなく、「私」が彼と恋愛関係になりたいと思い始めている。そのため、自分の中で色々なものが破綻しかけている。

 

自覚するきっかけは何が一番分かりやすかったかって、アニメの担当回で彼と公式ヒロインがいい感じに夜デートをするのだが、それを見て「ウッ…………」となってしまったのだった。別にこの回は初見でもなんでもなく、昔は「あ〜めっちゃ最高🙏」とか鼻息荒く見れていたのが、彼の顔が見たいな……と久し振りに見返したら物凄く気が沈んでしまった。女性をエスコートする彼はめちゃくちゃカッコよくて最高だったのは確かなのだけども、「あなたの哀しみを背負わせてほしい」「はい……」のやり取りにはなんというか、心が……負けてしまったというか……「えっ結ばれちゃったじゃん……」と思ってしまった。推しがアニメで優遇されていたら嬉しいはずなのに、今まではそうだったのに、変わってしまった己を知った。

原作ヒロインの事は好きだ。もちろん好きだ。彼女が居なくては彼らは輝けないのだから。いやしかし、しかし、好きだけど、どうしても……どうしても……「負けた」と思ってしまう。ヒロインに「成る」ことができない。別人だとみなしているからこういう事態に陥る。原作ゲームでもそうだ。彼のルートを進めて甘い展開にヒャーッッ……!!と赤面するのだが、ヒロインと彼が二人三脚で仕事をする展開には、どこかで心が凪いでしまう。良いストーリーだ。間違いない。面白くて熱い。だからこそ、この二人の「運命力」に心が負けてしまう。彼の運命の人は公式ヒロインちゃんです。付き合うまでの過程も、当たり前かもしれないが公式の彼×ヒロインのストーリーが一番素敵だ。恋を捨てて夢を追おうとする彼とどうやって付き合えっていうんだ。というか、このヒロインだからこそ彼は好きになった訳で……。夢女子なので自分と彼の「世界」を構築する訳だが、どうやって出会いどういう経緯で付き合ったか?というとても重要な点を私は深めきれていない。だって、想像がつかない。なぜ彼は私を好きになったんだ?私にはヒロインのあの子と違って才能も何もないのに……。ドジでひたむきで素直で一途な努力家、そんなヒロインに私はなれない。そりゃあね、そんな子好きになるよ。そんな子がずっと側で自分について来てくれるんだもん。私だって好きになるよ。というかそもそも私レズビアンなんだよ。そう、ここにもう一つ混乱の種がある。レズビアン、男性キャラクターの夢女子を自我でやっています。二次元と三次元で性的指向や性的欲求のあり方が異なる人はまあ相当数居るだろうから私もそうなんだな、と思うことで流しているが、どうやら私は対二次元ではヘテロセクシャルなのかもしれない。まだガチ恋女性キャラクターに出会っていないだけかもしれないが。

 

ねえ公式ヒロインがいる人を自我で好きになってしまった夢女子の先輩方ーッ!どうやって心を保っているのーー!?!?

 

ふと、「私は誰からも祝福されていない」と思って泣きそうになる。普通にこのジャンルが好きなのに、その作中世界を捻じ曲げて勝手な妄想をしている。腐女子は仲間がいる。同じCPを好きになったらその話を人と共有できる。夢女子は孤独じゃないか?自分と彼の話は自分の中にしかないので、他者からの供給は望めない。夢女子、強い。強くない?強さが必要だよ夢女子。他人の解釈(公式も含む)にめげず自分の世界を保ち続けなければいけない。自分の作り出した世界をまず自分自身が強く「信じる」という事が何よりも肝心なのだと知った。私しか居ないんだよ、理解者は……。

彼との日常をツイートして、段々この世界の輪郭がしっかりして来たなと思っていると、ふいに「どうして今隣に彼が居ないんだろう」とマジで悲しくなる。幻覚、狂気、地獄、と夢女子は自分のツイートに付けることがあるが、確かだ。幻覚であることは分かっているが、でも自分の意志で幻覚を見続けなければいけない。正気に返ったら虚無感で死ぬ。早く狂ってしまいたい。え?私が彼女だけど?と曇りなき眼で言えるくらいに狂いたい。そうすれば悩むこともなくなる。なんという修羅の道なんだ……推し♡受け♡ってキャッキャしてたあの頃が懐かしい……。

 

弱音はやめよう。俺と彼とのハロウィンを妄想しろ。顔を上げろ。誇りを持て。強く生きろ。